2025/09/18
卒業式シーズンになると、「祝辞 書き出し」「PTA会長 挨拶 例文」といった検索が増えます。
書き出しに正解はなく、自分らしい言葉で話すことが大切です。
ということを下記のページをお伝えしています。
卒業式の祝辞 ― 書き出しに正解はない
https://www.documedia-p.com/oiwai-support/blog/2598/
ここでひとつ、少し立ち止まって考えてみたいことがあります。
「書き出しを調べようとした時点で、自分らしくあることから離れてしまうのでは?」
これ、けっこう本質を突いた問いだと思うのです。
「調べる」という行為が奪うもの
本来、自分らしい言葉というのは、
- 今、ここに立っていて
- 目の前に人がいて
- その空気を吸った瞬間に
ふっと口をついて出てくるもの。
検索窓に打ち込んで、例文を眺めて、使えそうなフレーズを拾い集める——その作業の中には存在しないものです。
「書き出しを調べる」「正解があると思う」「失敗したくないと思う」
この3つが揃った瞬間、祝辞は「言葉」ではなく「作業」になります。
結果として、
> 春の穏やかな日差しのもと〜
といった、誰が読んでも誰のものでもない文章が量産されていく。ある意味、当然の帰結かもしれません。
でも、「調べたほうがいい人」もいる
ただし、ここで話を終わらせてしまうと、大事なことを見落とします。
「PTA会長の卒業式の祝辞って、そもそも何?」
こういう状態の人は、調べたほうがいいのです。
これは「良い表現を探す」という話ではありません。純粋に、何も分からないのです。
- 自分の立場が分からない
- 何を話す役割なのか分からない
- どこから始めればいいのか見当もつかない
つまり、言葉以前に「地図がない」状態。
この段階で調べるのは、正解探しでも美文収集でもなく、「座標確認」です。これは、とても健全なことです。
調べるべきは「名文」ではなく「役割」
問題になるのは、調べる対象を間違えたときです。
- ❌ かっこいい言い回しを探す
- ❌ 使えそうな一文をコピペする
- ❌ 無難っぽい表現を集める
これらは、自分の立場が分かってからやると逆効果になります。なぜなら、せっかく芽生え始めた自分の言葉を、外から上書きしてしまうからです。
では、最初に調べるべきことは何か。
「PTA会長は、卒業式で何を”代表して”話す人なのか」
これだけでいいのです。
- 校長でもない
- 来賓でもない
- 教員代表でもない
- 「保護者代表」とも少し違う
PTA会長とは、学校と家庭のあいだに立つ人。子どもたちの日常を、一番近くで見てきた大人の代表。
ここが腑に落ちた瞬間、書き出しは「探すもの」ではなくなります。
調べる「段階」と「目的」を間違えない
整理すると、こうなります。
調べていい人:
- 立場も役割も分からない人
- 調べる目的が「座標確認」である人
調べないほうがいい人:
- 自分の役割は分かっている人
- 調べる目的が「名文探し」「失敗回避」になっている人
「自分らしく話せ」というアドバイスは、正しい。
でも、それは「調べるな」という意味ではありません。
調べる段階と目的を間違えるな、ということなのです。
書き出しを「書こうとしない」という方法
最後に、ひとつだけ実践的なヒントを。
書き出しに悩んでいるなら、「書き出しを書こうとしない」のが一番の近道だったりします。
たとえば、こんなことを一文だけ書いてみてください。誰にも見せない前提で、敬語も体裁も気にせずに。
- 今日、ここに来て最初に思ったこと
- 今、壇上に立って一番気になっていること
- 卒業生の顔を見て、胸に浮かんだ一言
その一文を、あとから「祝辞として通る形」に整えればいい。より高度な方法としては、卒業式当日まで書き出しを準備せず、「ぶっつけ」で話し始める。
要は、順番が逆なのです。
形式から入るのではなく、自分の中にある一言から始める。
本当に伝わる祝辞を書ける人ほど、「書き出しの正解」を探すのが一番遅い——そんな気がしています。
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