2025/09/18
春の卒業式シーズンを迎えると、なぜかいつも思い出すエピソードがあります。息子の小学校の卒業式でのことでした。
体育館に響くPTA会長さんの声。「皆さんがここまで大きく成長できたのは親御さんのおかげです。それに感謝をしましょうね」
確かに、そうですよね。親って本当に大変です。夜中の授乳に始まって、熱を出した時の看病、毎朝のお弁当作り、習い事の送り迎え…。思い返せば、どれだけ多くの時間とエネルギーを子育てに注いできたことでしょう。
だからこそ「親のおかげ」という言葉にも、うなずける部分は確かにあるんです。
でも、なんだかモヤモヤする…
それでも私は、その時なんともいえない違和感を覚えました。卒業式という晴れやかな場で、なぜか心がざわついたんです。
言い方の問題もあるのだと思いますが、考えてみると、子どもを育てるって親の役割として当然のことですよね。ご飯を作って、洋服を買って、勉強を見てあげる。それは親になった時点で引き受けた責任というか、むしろ「させてもらっている」ことなのかもしれません。
なのに「親のおかげ」を強調しすぎると、どこか「私たちがこんなに頑張ったんだから」という手柄話みたいに聞こえてしまって。子どもに恩着せがましく響いちゃうんじゃないかな、と思ってしまったんです。
本当は「子どものおかげ」なんじゃない?
よくよく考えてみると、親子関係って逆なんですよね。
私たちが「親」になれたのは、子どもが生まれてきてくれたからであって。
子どもが毎日元気に「ただいま!」って帰ってきてくれる。転んで泣いたり、友だちとケンカしたり、テストで悪い点を取ったり…。そんな日々の一つ一つが、実は私を成長させてくれていたんです。
子どもが挑戦している姿を見て勇気をもらったり、子どもの純粋な質問にハッとさせられたり。「お母さん、大好き」って言われて、どれだけ救われたか分からない日もありました。
つまり、子どもの存在そのものが、私にとっての宝物であり、力の源だったんです。
感謝の気持ちはどちら向き?
だからこそ、卒業式で「子どもは親に感謝しなさい」って言うのは、なんだか一方的な気がするんです。
むしろ私たち親の方から、子どもにこう伝えたい。
「ここまで一緒に成長してくれて、ありがとう」
「生まれてきてくれて、本当にありがとう」
この言葉の方が、きっと子どもの心にも温かく響くんじゃないでしょうか。そして何より、それが本当の気持ちなんです。
卒業式は確かに節目の日。でも、親子で「ありがとう」を言い合える、そんな優しい空気の方が素敵だなと思うのです。
※フィクションです。登場人物は架空のものです。内容は大真面目な内容です。