2025/09/18
前編では「祝辞の前に校長室へ──事前のすり合わせで変わること」をお伝えしました。
さて、後編の今回は、その学校だからこそ言えることに注目しましょうというお話です。
どの学校の卒業式でも使える祝辞と、この学校の卒業式でしか使えない祝辞。
どちらが印象に残るでしょうか。
前者は無難です。失敗しにくい。でも、子供たちは「よくある話だな」と思って終わります。後者は、子供たちが「自分たちのことを話してくれている」と感じます。
今回は、「この学校だから言えること」を祝辞に入れることについて考えます。
「標準化された話」の限界
たとえば以下の表現を見てください。
「6年間で大きく成長しました」「先生方のご指導に感謝します」「これからの活躍を期待しています」
どれも正しい、間違ったことは言っていません。よい表現です。でも少し、「その学校だから言えること」とまでは言えない標準的な内容です。一方、「この学校だから言える話」が入ると、子供たちの反応が変わります。
「この校舎が建てられて50年」「この地域の夏祭りで毎年見かけた皆さん」「入学した年は、ちょうどコロナ禍が始まった年でした」
こういう話が入ると、子供たちは「ああ、そうだった」と自分の記憶とつながります。祝辞が「自分たちの話」になります。
入れると効くもの
具体的に、どんな要素を入れると効果があるのか。いくつか挙げてみます。
学校の歴史
創立何年か。今年が節目の年か。校舎が建て替わった年か。歴史の中に、今年の卒業生を位置づけることができます。
「創立80年の歴史の中で、皆さんは何千人目かの卒業生になります」。こういう言い方をすると、卒業の重みが増します。
地域の特色
地域の行事、風土、産業。学校がある場所の特色を入れると、「この学校」の固有性が出ます。
「毎年秋祭りで会いましたね」「田植えの季節になると、学校の窓から田んぼが見えました」。地域に根ざした話は、共感を呼びます。
校訓やスローガン
校訓を形式的に読み上げるだけでは意味がありません。でも、実感を込めて使うと効果があります。
「校訓の『誠実』という言葉、最初は難しく感じました。でも6年間を振り返ると、皆さんは確かに誠実に過ごしてきた」。自分の言葉で解釈を加えると、校訓が生きてきます。
その学年ならではの出来事
入学した年に何があったか。在学中にどんなことがあったか。その学年だけの経験があるはずです。
「皆さんが入学した年、世界中がコロナ禍に見舞われました」「3年生のとき、この校舎の耐震工事がありました」。全員が共有している経験を言葉にすると、一体感が生まれます。
どこで調べるか
「この学校だから言えること」を知るには、少し調べる必要があります。どこで調べればいいのか。
学校のホームページ
学校の歴史、校訓、教育目標は、たいていホームページに載っています。沿革を見れば、創立年や校舎の建て替え時期もわかります。
学校だより
毎月発行される学校だよりを見返すと、その年にあった行事や出来事がわかります。保管していなければ、学校に頼めば見せてもらえることもあります。
校長先生・教頭先生への質問
前回の話と重なりますが、先生に直接聞くのが早いです。「今年の学年の特徴は何ですか」「学校として大事にしていることは何ですか」。聞けば教えてくれます。
自分の子どもや他の保護者からの話
自分の子どもに「学校で何が楽しかった?」と聞いてみる。他の保護者と話してみる。公式な情報とは違う、生の声が聞けることがあります。
入れすぎると「知ったかぶり」になる
ここで注意点があります。
地域や歴史の話を入れすぎると、逆効果になることがあります。
PTA会長は、学校の専門家ではありません。先生でもなければ、地域の歴史家でもない。保護者の一人です。詳しくないことを詳しそうに語ると、違和感が出ます。「この人、本当にわかって言ってるのかな」と思われてしまう。
大事なのは、「保護者として見てきた範囲で」という立場を守ること。
「50年の歴史を詳しく語る」のではなく、「50年続くこの学校で、6年間を過ごせた」という言い方をする。主語は学校の歴史ではなく、自分たちの経験です。知らないことは、知らないままでいい。無理に入れる必要はありません。自分が実感を持って語れる範囲で、地域や歴史に触れる。それで十分です。
それを元に、PTA会長が何を思うか?が大切
もっとも大切なのは、その内容を元にPTA会長であるあなたが何を思うかです。
地域や歴史に触れることが目的ではなくて、それを材料として、子供たちに対して、どう思うか、どう感じるか。です。全体を地域や歴史の話で埋める必要はありません。むしろ、入れすぎると重くなる。エピソードの前後に一言添える、くらいがちょうどいい。
「どこでも使える話」の中に、「ここだけの話」を少し混ぜる。それだけで、祝辞の印象は変わります。
この回のまとめ
- 「どこでも使える話」は無難だが、印象に残りにくい
- 「この学校だから言える話」が入ると、子供たちは「自分たちの話」と感じる
- 入れると効くもの:学校の歴史、地域の特色、校訓、その学年ならではの出来事
- 調べる場所:ホームページ、学校だより、先生への質問、保護者同士の会話
- 入れすぎると「知ったかぶり」になる。保護者として見てきた範囲で語る
- それらは材料であり、大切なのは、PTA会長がどう思うかである
編集後記
前編では、校長先生や教頭先生と事前に話しておくことの意味を考えました。そしてこの後編では、地域や歴史を祝辞に入れることについて考えました。
どちらも、「やらなければならない」ことではありません。原稿だけで祝辞は成立します。でも、やっておくと祝辞の質が変わります。祝辞は、当日だけのものではありません。その学校で過ごしてきた時間、見てきたこと、感じてきたこと。それが言葉になったものです。準備の段階で少し意識を広げておくと、言葉に厚みが出ます。
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