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なぜ「いい話」ほど届かないのか?

time 2026/01/06

「いい話をしたはずなのに、なぜか響いていない」

祝辞や挨拶を終えた後、そんな手応えのなさを感じたことはありませんか?
内容は間違っていないし、伝えたいことは伝えた。なのに、聞き手の表情がどこか冷めている。

この連載では、「いい話」が刺さらない構造的な原因を全4回で掘り下げていきます。第1回は、聞き手の心の中で何が起きているのかを見ていきましょう。

聞き手の頭の中で起きていること

話を聞いている最中、聞き手は黙っています。うなずいているかもしれません。でも、頭の中では「でもさ……」「それは理想論じゃない?」「うちは事情が違うんだけど……」という声が走っていることがあります。

この「心の中の引っかかり」が生まれた瞬間、話の内容はもう入っていきません。どれだけ正しいことを言っても、聞き手の心にはすでにブレーキがかかっているんです。

心にブレーキがかかる4つのパターン

聞き手の心に引っかかりが生まれるきっかけは、大きく4つに分けられます。

①正しさの押し付け
話し手が「評価」や「裁き」をしているように聞こえるパターンです。「〜するのが正しい」「〜であるべきだ」という言い方は、聞き手にとって「お前は間違っている」と言われているように響くことがあります。

②自由を奪われた感覚
「やれ」と言われた感覚が生まれるパターンです。「〜しなさい」という直接的な言い方だけでなく、結論を押し付ける構成そのものが「選択肢を奪われた」という感覚につながります。

③自分を否定された感覚
「責められている」と感じるパターンです。直接批判していなくても、「できていない自分」を突きつけられると、人は身構えてしまいます。

④現実を見ていない感覚
「事情が違う」「綺麗事だ」と感じるパターンです。話し手が聞き手の状況を理解していないように見えると、内容がどれだけ正しくても「あなたに言われたくない」という気持ちが湧いてきます。

心にブレーキがかかっているサイン

聞き手の心の中は見えません。でも、いくつかのサインがあります。

たとえば、その場ではうなずいているのに、後で何も変わらない。これは「聞いていたけど納得していない」状態です。話した内容がその後の会話で一切触れられず、なかったことにされているのも同じです。

「それはそうだけど」と言いながら別の話題に移ったり、「まあ、人それぞれだよね」「ケースバイケースだよね」と抽象的な話に逃げたりするのも、心の中で引っかかりが生まれているサインです。

「いい話」の落とし穴

ここからが本題です。なぜ「いい話」ほど届きにくいのか。

美談、教訓、感動──これらの形を取る話には、ある共通点があります。それは「結論が決められている」ということです。

「努力は報われる」「感謝の心が大切だ」「夢を持って生きよう」。どれも正しい。でも、聞き手からすると「結論が先に決まっていて、自分はそれを受け入れるだけ」という構図に見えてしまいます。

人は、結論を押し付けられると受け入れがたくなります。自分で考えて、自分で結論に辿り着きたい。その欲求を無視して「正解」を渡されると、たとえその正解が正しくても、素直に受け取れなくなるんです。

これが「いい話」が刺さらない構造的な理由です。

この回のまとめ

「いい話」が刺さらないのは、内容の問題ではありません。聞き手の心にブレーキがかかっているからです。

心のブレーキは、正しさの押し付け、自由を奪われた感覚、自分を否定された感覚、現実を見ていない感覚の4パターンで起きます。そして「いい話」ほど、結論が決まっている構造を持つため、聞き手の心に引っかかりを生みやすいのです。

次回は、引っかかりを生む「言い方の構造」を分解します。どこで心にブレーキがかかるのか、その「スイッチ」を特定していきます。

第2回「引っかかりを生む「言い方の構造」を分解する」へ

   

この記事の著者

ニーバーオフィス

2006年以来、長きにわたり祝辞・挨拶原稿の代筆を行っている会社の代表者です。このサイトではPTA会長の祝辞・挨拶について、多くのPTA会長のご助力をしてきた経験からアドバイスをしています。